”信者”のこころ〜なぜ騙され続けたのか〜

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マインド・コントロールの基本的な仕組み

破壊的カルトについて書かれた本はたくさんある。

私が最初に読んだのは、こういった世界では有名な『影響力の武器』(ロバード・B・チャルディーニ 誠信書房)である。心理操作とその作用について基本的なことが書かれてある。

 

『カルトに傷ついたあなたへ』(マインド・コントロール研究所 いのちのことば社

この本の第2章「マインド・コントロールを理解する」(西田公昭氏)の「4マインド・コントロールの基本的な仕組み」の最初には

マインド・コントロールの詳しい方法や理論について知りたい方には、拙著⑴⑵をお読みいただきたいと思います。本稿では、マインド・コントロールがどうして可能なのか、それがどうして強力に作用しうるかについて説明します。 

 と書かれているが、この拙著として示されている『マインド・コントロールとは何か』は、詳し過ぎてピンとこなかったが、ここではどうして可能なのか、それがどうして強力に作用しうるかについて説明します」という点について簡潔にまとめられているので、短い文章の中にも共感できる部分が多いと感じたので紹介したい。(下線、太字等による強調は私による)

 

 4 マインド・コントロールの基本的な仕組み

 

 マインド・コントロールの詳しい方法や理論について知りたい方には、拙著をお読みいただきたいと思います。本稿では、マインド・コントロールがどうして可能なのか、それがどうして強力に作用しうるかについて説明します。

 まず、「情報」の意味を考えてみてください。私たちは情報を獲得して知識や信念を形成します。それは日常の経験、対話、メディアに依存しています。思考したり判断したりすることもそういった情報に頼っていますし、同じ情報に基づいて思考すると、そのプロセスが論理的であろうとするほど同じ結論に至るのは明らかなことです。したがって、個人の経験、対話、接触可能なメディアを都合のいいものばかりにコントロールできれば、マインド・コントロールは可能となります。

 典型的な破壊的カルトはメンバーを特別の場所に住まわせ、外部との交流を禁止し、不特定のメディアは視聴できないように仕向けます。こうした物理的環境を用意できない場合でも、社会的には類似の環境を作り出しています。たとえば、日常の生活スケジュールを管理してメンバー個人の自由な時間をなくしたり、内部情報を徹底的にアピールする一方、外部の情報源がいかにでたらめであるか、耳を傾けることがいかにばからしいかと吹聴したりします。メンバーがこうした状況で半年から一年も過ごせば、あからさまな強制は受けることなく、本人が気づかないうちに、その組織の思考方法に従うようになるでしょう。問題の本質は、その情報が一方的であることに気づかないところにあります。自分では、十分に独立した情報を受け取って自分で判断していると思っているところにあります。

 そうした環境で長く活動すればするほど、それだけそこの思想になじんでゆきますが、こうした状態での都合の良い思考や意思決定をより強力にするために、破壊的カルトはさらにいろいろなことをメンバーに仕向けるでしょう。たとえば、入会するメンバーは、後戻りしにくくなるような大きな犠牲を払わされます。大切にしてきた家族との縁を切らされたり、仕事や学校をやめさせられたり、多額の財産を献金させられたりすると、心理的にそうした自分の行為を正当化しようとするため、組織をより高く評価するようになってゆきます。

 それから、メンバーは組織の信条や規則に沿った忙しい活動や大量の活動を与えられて、入会する以前の自分と比較してみるといった、視野の広い自省を行うエネルギーも時間的余裕もないことが多いと思います。しかも慢性の睡眠不足や粗末な食事などが拍車をかけることになります。またさらに、が単調な繰り返しであると、リズムにのれば新たなことを考えなくてよいため、思考も単純なパターンですむようになってゆきます。それに慣れてしまい、組織活動のみの生活パターンでは、それ以外のことを考えたり行動したりするのは、非常に面倒なことだし苦痛にさえなるのです。

 そして破壊的カルトでの生活が長くなると、たとえ外部の人と接触して、組織への批判や内部で言われている事実と矛盾する事態に出会っても、何かの間違いであるとか、端から悪意ある誹謗中傷であるとかみなし、否定的情報に正面から立ち向かわなくなります。

 このように破壊的カルトにおいて、マインド・コントロールは日常生活そのものであるため、本人は操作されていることに気づきにくいと言えます。一方、皆さんのように脱会して外部から組織を見ることができるようになると、その組織に関するいろいろな源からの情報を入手しやすくなるため、そこのメンバーの生活ぶりの異様性、すなわち、マインド・コントロールされていたことに気づきやすくなるのです。

 

 5 マインド・コントロールに気づいて

 

 マインド・コントロールされていたことに気づいた人は、だれもがかなりきつい精神的危機に陥ります。心の支えや生活の基盤を失うのですから、当然といえば当然です。しかし、マインド・コントロールされた状態とは精神異常でもなければ、脳に損傷を与えられることでもありません。時間のかかる人もいますが、心は自然に少しずつ回復してゆくでしょう。あせらずゆっくりと、冷静に未来を考えることが重要かと思います。

 マインド・コントロールは、元来育んできた自分だけのオリジナルな「心の装置」を欠陥のある思考装置とみなしてスイッチを切り、代わりに組織でコピーして提供された装置を動かしていた状態と言えます。ですから、マインド・コントロールに気づいた人は、もう一度スイッチの入れ換えをするのです。倉庫に眠っていたオリジナルの装置は、ほこりをかぶって動かしにくくなっているでしょうけれど、壊れてはいません。使っているうちにスムーズに動く状態に戻ります。

 ただし人によっては、破壊的カルトに入会する前にかかえていた心の問題にもう一度、対決しなくてはならないかもしれません。それは厳しい現実でしょうが、人生の問題に簡単な解決などないと思います。

 しかしながら、悩みや疑問にすぐさまの解答を求める必要は必ずしもありません。問題解決は先に延ばして、解答を保留しておくことも一つのよい作戦だと思います。適切な解決策が自然と浮かんでくることもあるし、時間が状況を変えてしまって、問題そのものが消滅することもあります。本来、自分で育んできた心の装置をしっかりとメンテナンスして、よりパワーアップしてください。

 

マインド・コントロール研究所 『カルトに傷ついたあなたへ』第2章「マインド・コントロールを理解する」いのちのことば社 



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