”信者”のこころ〜なぜ騙され続けたのか〜

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想い

 

一つは、カウンセラーや元メンバーが、組織内部で言われていた人物像と違っていたからです。カウンセリングの方法は暴力的だとか、カウンセラー、元メンバーは悪い人間だとか対策の講義で教わっていたのが、実際はおだやかな話し合いで進み、自分が感じた印象がかなり違っていたのです。彼らは真摯な態度で、話をしてくれました。まずその点で、組織に教えられていたことと事実が違うというのが、自分の中で一つの疑問になりました。

 二つめは、その組織によって、自分が変えられたということに気づいたからでした。それは、何日か話していく中で、「あなたはなぜこの組織に入ろうと思ったか」とカウンセラーに聞かれたときのことです。

 私は、今の自分と将来のためにプラスになればいいと思って、この組織に入りました。しかし、プラスになるよりもマイナスになっていたことに気づいたのです。この組織に通いはじめたころは、愛情深い人になりたいとか、人間関係を良くしたいとか、そのような目的がありました。しかし、気づいてみると、今の自分は家族にうそをつき、会社にうそを言って、人間関係は悪くなってしまいました。組織に入る前の自分の信念みたいなものが曲げられてしまっていたのです。自分はうそを言うのが嫌いだったはずが、いつも何かうそをついていた、ということに気づかされました。自分が変えられたと思ったときに、組織の中で結婚させられていた相手を本当に人間として愛しているのか、自分が変えられたから愛していると思い込んでいるだけではないか、と考えるようになりました。

 その後、私は真面目にカウンセラーと元メンバーの話の内容を確認しなければならないと思いました。けれども、「確認イコールやめる」というのではなくて、すべての内容を聞いて、真剣に考えたうえで、結論を出そうと決めました。今度は、変えられていない自分本来の目できちんと確認し、判断しようと思ったのです。私はカウンセラーと元メンバーの言うことすべてに賛成したわけではありません。いろいろな点で、まだ、たとえば組織の人間関係と仲間に対する情はありましたし、批判するのはいやだったし、だからあくまでも理性的に、組織の教えのみ確認していきたいという感じでした。しかしだんだん、確認すればするほど、組織の教えは論理的に何も根拠がないし、真理とは言えないとわかってきました。そして脱会することを決めました。本当に確認が始まったときに、組織の中にいる仲間のことがだんだん心配になって、できるだけ早く皆に事実を伝えなければという気持ちになりました。

 

マインド・コントロール研究所編「カルトで傷ついたあなたへ」

 

上の引用は、ある女性のカウンセリングによる脱会の経験について書かれた最後の部分である。

大切なことがいくつも書かれてるが、最後に仲間のことを想ったというところでこの手記が終わっているというところも印象的である。

 

この中で彼女が「確認」といっているのは、自分が正しいと信じてきた教団の教えが、本当に真理だったのかを、「自分本来の目できちんと確認し、判断」することをここで「確認」と言っている。

 そして「確認」によってそれが真理でないと判断したとき、仲間のことが心配になった、と言っているのである。

 

これは、非常によくわかる話ではないだろうか。マインド・コントロールを経験し、そしてそこから脱出することができた人ならば。

 

教団の仲間のつながりは強い。いわばファミリーのようなものだ。それが誤った教えで繋がった儚くもろいものであったとしても、ある意味真面目な人が青春や人生をかけて良かれと思って一生懸命やっていたのである。

 

自分は既にそれが誤りであったと知り、今もまだかつての仲間が愚かなことを信じていると知ったとしても、それはかつての自分の姿なのである。何をやっているのか、早く気づいて欲しいと思う、それは全く、自然な情によるものであって、もちろん情などかける必要はないという考えもあるだろうし、情などかけていられない状況にあればそんなことを考える余裕もないのであるが、情があればこその人の世の生業である。個人的な恨みつらみなどといったものとは別のところで、動かされる「心」がまた別の人の心を動かすということがある。



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