カルトの罪
自分の子ども、奥さん、兄弟あるいは友人が破壊的カルトに入ったというので、助けを求めて、いろいろな人が私の研究所に来ます。多くの場合、彼らは、本人に破壊的カルトをやめさせること以外何も考えていません。本人がやめたら、問題は終わると思っています。しかし現実はまったく違っています。
破壊的カルトを脱会した時から、本人にとっていろいろな面で苦しみが始まります。自分が信じていた道と、もっていた希望がすべて消えてしまうのです。冒頭にあげたことばのとおり、自分がマインド・コントロールされていたと知ったときは、心に大きな穴が開いた感じがして、しばらく頭の中が真っ白になります。そこから立ち上がるには時間がかかります。
これは「リハビリテーション」と呼ばれます。リハビリテーションの期間は人によって変わります。そのときにかかえる悩みも、それぞれによって違っているのです。
多くの破壊的カルトの元メンバーの話によると、この期間は自分の人生と自分自身を取り戻すための長くて、つらい戦いです。彼らは、リハビリテーションには思っていた以上に時間がかかったと言っています。そして、絶望感の中で今まで信じていたことをやめて新しい出発をするために、どれほど勇気が必要だったかを説明してくれます。
カルトを脱会しても、カルトの影響は強く残り、脱会したら終わりではなくそれからのほうがある意味大変である。
ただし、私の場合は上の引用の
＞自分が信じていた道と、もっていた希望がすべて消えてしまう
というのとは違って、むしろ”信じていた道を遂げるための新たな希望を見出した”から、脱会したのであって、希望はもっていたからこの点についてはこのとおりではなかった。
しかし、カルトの教えを信じていた為に染み付いた考え方や習慣、正しいと固く信じていたものがそうではなかったという裏切られた想いは、脱会してから今尚私の中に暗い影と影響を残している。
マインド・コントロールされていたことを認めたくないという想いは脱会後も変わらずにあり、私も多少はされていたかも知れないが、人よりかは弱かったかあるいはほとんどされてなかった、だから私はやめることができたのだと心のどこかで思っていた。
カルトに属していたことやまたそこでしたこと、マインド・コントロールされていたことに対する反省を、他者が求めることをしないほうがいいと思う。
それは、マインド・コントロールが抜けない限りはできないし、マインド・コントロールが抜けるということは脱会後何年かかかってやっとできることなのだ。しかもそこには脱却への本人の意識と気づきという努力も必要である。
カルトのおかげでとかカルトを経験したから、という想いもかつては多少はあったがそれは違うと今は考えている。自分がその道を通ったのは確かだが、「そこを通らなければならなかったのか」は結果論であり、もしかしたらカルトに出会わなくても、他のきっかけで他のところで出会いがあって、これほどの回り道をせずに済んだかも知れない。もしそうならそのほうがよかったに決まっている。
「私がそこを通ったのは必然だ」と考えるならばそれは仏教とは相反する運命論になってしまうし、今死後や人生のことで悩む人、あるいは生死を超えた救いを求める人に、「ではここで迷って（騙されて信じて）一生懸命やって間違いがわかってから正しい教えを聞いてください」とカルト教団を勧めることがあるだろうか。あるはずがない。（「捨てるためには持って一生懸命やってやらないとだめだ」と騙す話を思い出した）
加えて、「どのみち仏様は導いて救ってくださるのだから何をしてもいいのだ」というのは、造悪無碍である。
私は抜けられたが考えてみたら、今も人が残っているように相当信じていた私も騙されたまま気づかずに一生を虚しく過ごす確率のほうが高かったのではないかと思う。ただでさえ、無常である。
騙さなくても人は救われる。
救われるのに騙される必要もなければ、まして人を騙す必要もない。
人を救いから留まらせ遠ざけ、造る必要のない罪を造らせるカルト。
だから今の私は人を騙すカルトは全否定である。
